ディーラーによる下取りの価格は、車買取店による買取の価格よりも安くなるといわれます。車を売る前にこうした情報を見聞きした方、あるいは実際に下取りを依頼してみて「安い」と感じた方もいるでしょう。
下取りの価格は、多くのケースで買取の価格よりも安くなるものです。しかし、例外的に高級車では下取りの方が高くなるケースもあります。
こうした例外も含め、「下取りと買取で実際にどの程度の価格差が出るのか」を検証していきます。
「下取りに出すか買取に出すか迷っている」「どのくらいの価格差が出るのか見てから決めたい」という方には、きっと参考にしていただけるでしょう。
目次
ディーラーによる下取り価格が安いといわれる3つの理由
ディーラーによる下取りの価格が、車買取店による買取の価格より安くなる理由は主に3つあります。ここでは、その3つの理由について解説します。
あくまで「新車購入の値引き」のため
ディーラーの下取りの価格は、あくまで「新車購入時の値引き」という行為です。つまり、サービスの一環であり本業ではないため、ほとんど力を入れていません。「力を入れていないから査定が甘くなる」ことはなく、次の段落で述べるとおり、査定価格は総じて安くなります。
査定のノウハウがないため
ディーラーのスタッフは、中古車の査定をメイン業務にしているわけではありません。そのため、査定をメイン業務にしている車買取店のスタッフと比較すると、査定のノウハウに乏しいのが実情です。
ノウハウが乏しければ正確な査定ができません。自分の査定に自信を持てないため「とりあえず、安めに下取りする」という選択になります。
再販ルートがないため
中古車を高く売るには再販ルートが必要です。車買取店は特に海外市場で多数の再販ルートを持っています。日本ではほとんど価値がない車でも、海外では高値での売却が可能です。たとえば、年式の古い車(低年式車)や、走行距離の長い車(過走行車)であっても、日本車というだけで高く売れるケースが多くあります。
車買取店はこのような再販ルートを持っていますが、ディーラーはこうしたルートを持っていません。自社系列の中古車販売店で売るか、国内のオートオークションに流すといった、限定的なルートしかありません。高く売るルートを持たない以上、高値での買取も難しいわけです。
ディーラーの下取りが車買取店より有利な点
下取りの価格は安くなりがちですが、買取より有利になる部分もあります。ここでは、下取りが買取よりも有利になる点を3つ解説します。
新車への乗り換え手続きが簡単になる
車買取店に今の車を売る場合、車を売る手続き、新車をディーラーで買う手続きの2つをする必要があります。手続きが2回必要になるわけです。
ディーラーの下取りの場合は1回で済みます。購入手続きのなかで、下取りの手続きもまとめて行ってもらえるためです。このため「とにかく手続きを楽にしたい」という人には、ディーラーの下取りが向いています。
悪徳業者が少ない
ディーラーとメーカーの契約形態はさまざまです。しかし、どのディーラーであっても「トヨタの顔」や「日産の顔」になることは間違いありません。そのため、悪徳業者に分類されるほど問題のあるディーラーは少ないといえます。
中古車の買取業者については、ごくわずかに悪徳業者が存在しています。原因の1つは車買取店を開業するハードルが低いことです。古物商許可の「中古自動車商」の免許を取得し、店頭に下のようなプレートを掲げれば開業できます。
古本など他の分野と比較すると、中古自動車商の審査はやや厳し目です。しかし、正規ディーラーとしての営業許可を得ることと比較すれば、ハードルは相当に低くなります。このように開業のハードルが低い買取業者と違い、開業のハードルが高いディーラーでは、悪質な業者が自然に少なくなります。
ディーラーによっては査定価格が高くなることもある
店舗や担当者、車種などの諸条件によって、ディーラーの下取りの方が高い価格になるケースもあります。主に、ディーラー側が新車を売りたいと強く思っている状況で見られるケースです。
ディーラーが新車を強く売りたいと思うケースとしては「販売台数を伸ばしたい」「高価な車である」などが特に多く見られます。たとえば、店舗や担当者がノルマ達成を迫られている状況では、かなりのサービスをしてでも新車を売ろうとするケースが少なくありません。
高級車なら下取りの方が高いこともある(LS500hの実例)
高級車の場合「多少サービスをしてでも売りたい」と考えるディーラーが多く存在します。「高めに下取りしても十分に利益が出る」「経済力のある顧客を確保できる」などの理由からです。実際に、下取りの方が高値になる可能性がある例を紹介します。
上の表は、レクサスのLS500hの下取り参考価格です。年式が2018年でIパッケージの場合、参考価格が698万円と算出されています。そして、同じ条件(2018年式・Iパッケージ)の車が、中古車市場において799万円で販売されています。
中古車の買取価格は一般的に販売価格の6~9割とされています。仮にこの割合だったと仮定すると、上の画像の車は479万円~719万円で買い取られたと推測できます。
わかりやすくするために「479万円~719万円」の中間値である599万円で、下取り参考価格と比較してみましょう。比較の結果は、下の表のとおりです。
ディーラーの下取り | 698万円 |
---|---|
中古車買取 | 599万円 |
見てのとおり「ディーラーの下取りの方が99万円高い」という結果になりました。あくまで目安ではあるものの、ディーラーの下取りの方が高い価格になるケースもあることが、この検証からわかります。参考までにレクサス・LS500hの新車価格を示すと、下の画像のとおり1,142万円です。
このように「新車で1,000万円を超えるような高級車」であれば、買取よりも下取りの方が高くなるなる場合もあります。
【車種別実例】ディーラーの下取り価格と買取店の相場を比較
実際に下取りの価格と買取の価格がどれだけ違うのか、車種別に検証してみましょう。3車種のデータをまとめると、下表のようになりました(データは2020年11月中旬時点のもの)。
メーカー・車種 | 下取り参考価格 | 目安買取価格 |
---|---|---|
トヨタ・プリウス | 97万円 | 84万円~126万円 |
レクサス・CT200h | 167万円 | 159万円~234万円 |
日産・ノート | 22万円 | 60万円~90万円 |
目安買取価格は中古車の販売価格の6割~9割が買取価格だったと想定して算出しています。下取り参考価格は、メーカーの下取りシミュレーションから算出したものです。以下、3車種での検証結果をまとめていきます。
トヨタ・プリウスPHV
プリウスPHVで年式が2015年の場合、下取り参考価格は97万円です(下図)。
同じモデルの中古車は、139.8万円で売られています(下図)。わかりやすく140万円と考えましょう。
140万円に「6割~9割」という数字を当てはめると、84万円~126万円という金額です。中間値をとると105万円で、下取り価格より8万円高いという結果になりました。
8万円という金額だけ見ると、小さく感じるかもしれません。しかし、ここでの下取り・買取の価格はどちらも「100万円前後」です。つまり、8万円は約8%に該当します。「査定価格が8%高くなる」と考えたら、小さな差ではないといえるでしょう。
レクサス・CT200h
レクサスのCT200hは、年式が2015年でバージョンCの場合、下取り参考価格が151万円です(下図)。
同じ車が、中古車では265万円で売られています(下図)。プリウスと同様に買取価格を推定すると、中間値は197万円です。
中間値で買い取られたとすると、下取りの151万円より46万円高かったことになります。ディーラーは新車を売るために、下取りのシミュレーション価格を高めに出しているはずです。その点も考慮すると、レクサスCT200hを上記の条件で売る場合、買取の方が高くなると考えていいでしょう。
日産・ノート
日産・ノートの「X DIG-S・2015年式」の下取り参考価格は22万円です(下図)。
このシミュレーションはトヨタのサイトで行っているため、価格が低めに出ている可能性があります。トヨタのサイトを用いている理由は、日産のサイトでは写真を送らなければシミュレーションをできないためです。
上記の理由から22万円より高くなる可能性もありますが、ひとまず22万円で検証を進めます。同じ車が、中古車では99.8万円で売られています(下図)。
キリよく100万円と考えると、買取価格は60万円~90万円だったと推測できます。最も安い60万円だったとしても、下取り価格(22万円)の3倍に近い金額です。
トヨタやレクサスでの検証と比べて差がありすぎるため、この数値をそのまま鵜呑みにするわけにはいきません。しかし、ノートでもやはり「下取りの価格は安くなる可能性が高い」といえます。
ディーラーの下取りと車買取店、どっちがオススメ?
下取りと買取を比較する際「結局、自分にはどっちがオススメなのか」という結論を知りたい方も多いでしょう。ここでは、下取りと買取のそれぞれが「どのような方にオススメか」をまとめます。
ディーラーの下取りがオススメな人
ディーラーの下取りが向いている人は、「高く売るより、買い替えの手続きを楽にする方が重要」という人です。価格面では明らかに買取が有利であるため、下取りを選ぶとすれば「価格以外の理由」です。
また、記事中で紹介したレクサス・LS500hのような高級車であれば、下取りに出す方が高値を提示される可能性があるため、オススメできます。
車買取店がオススメな人
車買取が向いている人の条件は、「車を高く売りたい」という人です。高級車などの例外を除けば、基本的に買取の方が高額での査定を期待できます。
新車に買い替える場合、買取では「今の車を売る手続き」と「新車を買う手続き」を別々にする必要があります。「その程度なら苦にならない」という人には、買取がオススメです。また、買い替えでも「中古車に買い替える」という場合は下取りを利用できないため、買取一択です。
【一覧表】ディーラーの下取りと車買取の違い
ディーラーの下取りと買取の良し悪しを4つの項目で比較すると、下表のようになります。
項目 | 下取り | 買取 |
---|---|---|
査定価格 | ⭐⭐⭐ | ⭐⭐⭐⭐⭐ |
安心感 | ⭐⭐⭐⭐⭐ | ⭐⭐⭐⭐ |
手間(売却のみ) | ⭐ | ⭐⭐⭐⭐⭐ |
手間(乗り換え) | ⭐⭐⭐⭐⭐ | ⭐⭐⭐ |
査定価格については、ここまで説明したとおり、買取の方が高くなります。安心感については、ディーラーの方が大きいといえます。
手間については「売却のみ」であれば、下取りを依頼できません。逆に、新車への乗り換えであれば、ディーラーの方が負担を小さくできます。
こうして比較すると、総合的には買取の方が優れているといえるでしょう。
まとめ
高く売ることを優先するなら、下取りより買取を選ぶべきです。ディーラーで新車を買う場合であっても、今の車を高く売れるのは車買取店の方だといえます。
「本当にそうなのか」を確認するためにも、やはり車買取店の査定は複数受ける必要があります。複数の査定を受けた上でディーラーにも下取りの査定を依頼し、双方を比較するのがいいでしょう。
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