車はある程度まとまった金額が動く高額な商品ですから、「車買取業者に買い取ってもらう際にはなるべく損をしないように交渉したい」と考える方は多いでしょう。しかし、はじめての場合はうまい交渉の仕方を知らない方がほとんどではないでしょうか。
そこで今回は、少しでも高く売るために使える賢い交渉術について解説します。
買取業者も商売ですから、「少しでも安く買い取りたい」と考えます。その事実を前提にしつつ、売り主があらかじめ準備するべきことを解説しますので、この記事を参考に高く買い取ってもらう準備を整えましょう。
目次
少しでも高く車を買取してもらう為のおすすめ交渉術
少しでも高く車を買取してもらう為の交渉術は以下です。
- 他社にも査定している旨を伝える
- 希望額は買取相場より少し高く伝える
- 2つの売却予定の時期を伝え交渉する
- 事故歴・修理歴は正直に申告する
- 車の引き渡し時期をなるべく早める
ここからは、以上の交渉術の詳細について解説していきます。
車を少しでも高く買い取ってもらおうと思ったら、こうした交渉術を駆使して、買取業者が欲しがる車であるとアピールすることが大切です。
だからといって、マイナス材料を隠すのはよろしくありません。詳細な理由は後述しますが、少なくともすぐにばれるようなマイナス材料(事故や修復歴など)は正直に申告するべきです。
自分が損しないだけでなく、相手にもなるべく損を与えないように提案することが交渉の基本です。
他社にも査定している旨を伝える
車の査定の際に使える交渉のコツとして第一に挙げられるのは、競合相手がいることをはっきり伝えることです。
業者によっては、査定を無視した非常に安い査定を吹っ掛けられることもあります。そこで競合他社にも査定の依頼を出していると伝えることで、自然と査定は競合相手や買取相場を意識した金額になるでしょう。
査定額の高い業者に売りたいことは業者も理解しています。競合他社の存在を伝えれば、業者同士の競争心を煽ることにつながり、相場以下の安い査定額を提示しにくいため、査定アップを狙うこともできます。
希望額は買取相場より少し高く伝える
希望額を提示することも交渉を有利にするコツです。
まずは、買取相場を調べること、他の業者の査定額をある程度用意することが求められます。こうした情報がある程度出揃うまでは、こちらから希望金額を言わないことも大切です。交渉材料は出す順番も熟慮しなければなりません。
相場感を知ったうえで、他の業者の設定している最も高い金額、あるいは、少し上乗せした金額をこちらから自信をもって提示しましょう。上乗せはあまり極端に行うと現実的ではなくなってしまいます。あくまでも現実的な範囲にとどめましょう。
しかし、相手も営業のプロですから、交渉術には長けています。「今ここで即決してくれれば値上げします」といったように揺さぶりをかけてくることもあるでしょう。
言葉に安易に頷いてはいけません。あくまでも自分が持っている情報を基準に自信をもって交渉を進めることが重要です。
2つの売却予定の時期を伝え交渉する
まずは、査定を依頼した時から換算して数カ月以上先の「売る予定の時期」を設定して提示し、「その時期ならいくらで売れるか」を聞きます。その答えを聞いたうえで、次は「今売るとしたらいくらになるか」を聞きましょう。
すると買取業者は、高確率で数カ月以上先の時期に売れる金額よりも高い値段を提示してきます。
何故かというと、買取業者は「なるべく早く、何なら今買い取りたい」と考えているからです。
「今の方が高く売れるなら、今売っちゃおう」と売り主が考えるような価格を提示して、今時点での契約を成立させようとします。その心理を逆に利用するのです。
そうした心理を利用するために、あえて「車が高く売れる時期」に上記の交渉をはじめるともっと高く売れるかもしれません。
これは、車が高く売れる時期を狙うことにより仕入れ価格のベースがより高く設定されるので、より高く売れるというロジックです。
事故歴・修理歴は正直に申告する
交渉を有利に進めるには、なるべくプラス材料をアピールしてマイナス材料は隠すべき、と思うかもしれません。しかし、それは誤りです。
車の場合、マイナス材料はあって当然のものとして査定されます。さらにいえば、プロの目でマイナス材料がないかを徹底的に洗い出されるものと考えてください。
特に事故歴・修復歴など大きな瑕疵はまずバレると考えて間違いありません。
事故歴・修復歴といった明らかにばれるようなマイナス材料は、最初から正直に伝えておくほうが好印象となるでしょう。
それに加えて、車の売り主には瑕疵担保責任というものが課せられます。瑕疵担保責任とは、売り主が売る状態が価格相応の質があることを保証し、仮に瑕疵(重大な不具合)があった場合は相応の責任を負うというものです。
2020年4月から改正民法が施行され、瑕疵担保責任は「契約不適合責任」に変わりました。
参考:民法改正で瑕疵担保責任から契約不適合責任となって何が変わるか
従来の民法では、瑕疵担保責任の不履行に対して買い主側は、契約解除か損害賠償請求しかできません。しかし、改正後は契約不適合責任の不履行に対してさまざまな要求ができるようになり、買い主側がより有利になります。
この改正によって、以前から業者とのトラブルでよくあった「契約後に査定額を大幅に減額される」というのが、買い主側の「代金減額請求権」として法律の後ろ盾を得ることになったのです。
参考:アイリス法律事務所「民法改正~売買の瑕疵担保責任について~」
そのため、車買取の際は最低限わかる範囲の不具合はすべて正直に申告するほうが結果的に損をしないですみます。車を売る際にはなるべくわかる範囲での不具合や故障についてはすべて正直に申告し、契約書面に記載するようにしましょう。
そして、契約書をよく読み、瑕疵担保責任や契約不適合責任の「免責特約」の有無についてもしっかり確認してください。
車の引き渡し時期をなるべく早める
少しでも高く売ろうと思ったら、車はなるべく現状で最も綺麗で新鮮な状態のまま引き渡すのが理想です。
すなわち、引き渡し時期をなるべく早めるというのが交渉の際のコツといえます。
ただし、早ければ早いほどいいというわけではなく、時期を調整する必要があります。そこが交渉術の見せ所です。
何故なら、すぐに渡すと最悪の場合、車の持ち逃げ(車を引き渡したのに売却代金が振り込まれない)といった、重大なトラブルに巻き込まれるリスクがあるからです。
それほどでなくとも、契約後の査定額の減額などのトラブルも起こりえるので、車を引き渡した時点で相手が有利になるという事実は覚えておきましょう。
どの程度の引き渡し時期を見据えて契約すると有利になるかは、その場の交渉次第です。状況を見ながら判断し、少なくとも3日後~1週間後までのあいだで引き渡し時期を設定し、なるべく早く引き渡す方がいいというのは間違いありません。
あまりに引き渡しが遅くなると再査定で買取金額を減額させられる可能性が高くなるので、警戒しすぎにも注意しましょう。
交渉をする前に準備するべきこととは?
以上、車買取の際にどのような交渉術を用いれば有利に買い取ってもらえるのかを解説しました。
車買取の交渉は一般的に時間をかけて行いますので、以上のような交渉術を適切なタイミングで用いることで、少なくとも何もしないよりは、損をせずより高い価格で買い取ってもらえることは間違いありません。
そして、上記のような交渉術を巧みに用いるためには、事前に準備しておくことがたくさんあります。具体的には、価格交渉前に以下のような準備が必要です。
- 1:競合他社数社の出張査定を受ける
- 2:売る車の買取相場を把握する
- 3:車の売却時期をより高く売れる時期に設定する
- 4:自分の車のプラス材料になるポイントを把握する
- 5:車を綺麗にする
以上のように準備というのは、そのほとんどが「交渉前に必要な知識を得ておく」ことです。ここからはその準備の詳細を解説します。
知識や情報を頭の中に叩きこんでおくことで自信をもって交渉に臨めますし、交渉を有利に運べるでしょう。
競合他社の査定金額は大きな交渉材料になる
まず、より交渉を有利に運ぶためには、複数業者から査定をもらっておくことが重要です。少しでも高く買い取ってもらうには、複数業者を競わせて一番高い査定をつけてくれた業者と契約するのがセオリーです。いくつかの業者から査定をもらっておくことで、査定金額の比較材料ができます。
同時に、車査定のプロの目から直接見た本当の買取相場を知れることも重要です。できれば一括査定を利用すると、より手間が少なくより多くのプロの査定額を提示してもらえます。
売る車の買取相場を把握する
少しでも高い査定を受けるためには、あらかじめ売る車の買取相場を調べておくと何かと便利です。
車の買取相場を知っておくことで、相場を大きく下回る安い価格で買い叩かれることを防げることも大きいですが、何よりも自分から希望額を提示できるようになることが一番のメリットといえます。
車の買取相場を把握するには、一括査定サイトを利用すると便利です。
十社以上から査定を出してもらえるサイトもあるので、車の情報からどれだけの買取額が出るのか、その平均額をすぐに把握できます。
また、査定の申し込みの前に、売る予定の車の情報を入力することで買取相場を調べられる一括査定サイトもあります。
車の売却時期をより高く売れる時期に設定する
車というのは先ほども説明したように売る時期というものが非常に査定に影響してきます。
買取業者もそうした時期を見据えて戦略的に仕入れを行うので、売る時期を明確に設定しておくと業者にとっても好印象です。
車が高く売れる時期は、中古車需要が最も高まる3月を見据えた仕入れ時期である1月~2月と、決算期の9月を見据えた仕入れ時期である7月~8月が該当します。詳しくはこちらの記事をご参照ください。
少しでも高く売れそうな時期を把握したうえで、車を売る交渉をはじめる時期を、あえて高く売れそうな時期に設定しましょう。業者全体の需要も大きいことから、買取業者もなるべく早く車を欲しがるので、結果として交渉が有利です。
自分の車のプラス材料になるポイントを把握する
標準装備品・オプション品・車検の残り期間などアピールできるプラス材料をなるべく増やすことが、少しでも高い査定を得るコツです。
買取業者の査定基準の大元になるのは、JAAI(一般財団法人日本自動車査定協会)の「査定基準価格」です。そこに標準整備費や特別調整費を入れた「基本価格」に対し「加減点基準に沿った加減点」をプラスマイナスすることで車の査定額が決まります。
細かな傷やへこみなどのマイナス材料については伝えなくて済むなら伝えないほうがいいですが、少なくとも、事故歴や修復歴などすぐにばれる致命的なマイナスポイントだけは正直に申告するこで、トラブルも防げるので、査定者に伝えるようにしましょう。
車を綺麗にする
車を買い取ってもらう前に車を綺麗にしておき、できる限り見栄えをよくしておきましょう。
必須ではないですが、あらかじめ少しでも綺麗にしておくほうが好印象となるでしょう。
また、査定額にも響く点ですが、改造やチューンナップは査定のマイナス要因になるので、戻せる範囲で純正の状態に戻しておくことも大切です。
綺麗な状態を常に保っておくことによって、引き渡し時期についてもある程度調整ができます。そして、そうした準備は業者による再査定のリスクを防ぐことにもつながります。
まとめ
人生で数度しか車を売却することがない一般の方に対し、買取業者は毎年のように何百何千件もの交渉を行ってきたプロです。
そのため、業者を出し抜くことはあまり考えないほうがよいでしょう。交渉において何よりも大事なのは、業者の揺さぶりに惑わされず、自分の培った情報を基準とすることです。
そうした基準を大切に、あくまでも双方がなるべく損をしないような交渉にもっていくことが理想といえるでしょう。
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