本や服などと違い、車は売るときにはたくさんの書類が必要です。普段よく目にする書類もあれば、滅多に使うことのない書類、そもそも交付されていない可能性がある書類まで内容はさまざまで、初めて車を売る方にとっては混乱しやすいものとなっています。
書類がきちんと揃っていないと、車を売る手続きがスムーズに進まず、手間と時間ばかりかかってしまいます。この記事では、車を売るときに必要な書類や、書類の準備をしていて発生したトラブルへの対処法を紹介します。車を売るときには、ぜひ参考にしてください。
目次
車を売るときに必要な書類一覧
「車を売る」といっても、普通自動車の方もいらっしゃれば、軽自動車、トラック、大型車両などの方もいらっしゃると思いますので、まずは、普通自動車や軽自動車などの車種を問わず必要になる書類を紹介します。
車を売るときに欠かせない書類はこの5つ
車種を問わず、車を売ることになったら必要になる書類はこの5つです。
- 自動車検査証(車検証)
- 自動車納税証明書
- 自動車損害賠償保険証明書(自賠責保険証)
- リサイクル券
- 印鑑登録証明書(軽自動車の場合は住民票)
ただし、この書類の中には売る側が自分で用意するものと、売る相手に用意してもらう物があるので、順に説明します。
1.自動車検査証(車検証)

引用:軽自動車検査協会
「自動車検査証(車検証)」は、自動車保安基準に適合していることを証明する重要な書類です。車両番号や車の重量、所有者の名前など、その車に関する詳細な内容がまとめられており、車を買ったときに交付されるほか、車検をするたびに更新したものを貰えるようになっています。自動車検査証は、車を使う際は必ず携行する必要があると定められている書類なので、基本的にダッシュボードで保管されています。
自動車検査証には所有者の現住所・名前も記載されていますが、もし引っ越しや結婚などをして内容が変わっている場合は、別途住民票も必要です。
2.自動車納税証明書

引用:三重県
また、この自動車納税証明書には有効期限も明記されています。車を売る時が自動車納税証明書の有効期限内になっているかは、よく確認しましょう。有効期限が切れていた場合、書類は効力を持たなくなります。
3.自動車損害賠償保険証明書(自賠責保険証)

引用:軽自動車検査協会
「自動車損害賠償保険証明書」は、「自賠責保険証」とも呼ばれる書類です。車、バイクなどの車両に乗る人の加入が義務づけられている自動車損害賠償保険(自賠責保険)の契約期間や、契約している車の車種、所有者などが記載されています。
自動車検査証(車検証)と同じく携行が必須と定められている書類なので、ダッシュボードに保管されていることがほとんどです。もし紛失した場合は、保険会社に依頼して再発行してもらう必要があります。再発行については、以降の項目で紹介していますので、あわせてチェックしてみてください。
4.自動車リサイクル券

引用:環境省
自動車は廃車にする場合にかかる費用(リサイクル料)を、所有者から徴収しています。そのリサイクル料を払ったことを証明するのが、「自動車リサイクル券」です。
リサイクル料は、その車の最終所有者が支払うことが義務となっています。車を売ることはすなわち、車の所有者を移転することなので、最終所有者でなくなる場合はリサイクル料の払い戻しを受けることができます。自動車リサイクル券は、そのために必要になるのです。
注意すべき点は、リサイクル券は再発行ができないことです。ただし、自動車リサイクル券がなくても、「自動車リサイクル料金の預託状況」という書類を用意することで、払い戻しを受けることができます。
自動車リサイクル料金の預託状況は、自動車リサイクルシステムのホームページよりダウンロードができます。自分の車の自動車検査証(車検証)を用意して自分の車の状況を検索し、印刷して持参しましょう。
5.印鑑登録証明書

引用:岐阜市ー印鑑登録証明書が必要なとき
車を売る際には、さまざまな書類に実印を押しますが、その実印が市町村で登録されている正式な物であると証明するのが「印鑑登録証明書」です。
印鑑登録証明書は、同じ物を2通用意する必要があります。1通は車の所有者の名義変更に、もう1通は自動車税の権利譲渡のために使用されるので、忘れずに2通発行してもらうように注意しましょう。また、印鑑登録証明書の有効期限は発行から3カ月以内です。市区町村ですぐに発行できるので、もし有効期限が切れてしまったら、最寄りの市役所・区役所へ行きましょう。
委任状・譲渡証明書を用意するのは個人売買の場合のみ
以上が、車を売る際に必要になる書類です。これらに加えて、中古車買取専門店やディーラーではなく個人売買をする場合は、さらに下記の2つの書類が必要です。
中古車買取専門店やディーラーで車を売る場合は、委任状・譲渡証明書は販売店側に用意して貰えるので準備する必要はありません。よりスムーズな手続きをするために、内容だけは把握しておくと良いでしょう。ただし、店頭では実印を使用するので、必ず実印を持って行きましょう。
6.委任状 *個人売買の場合のみ

引用:国土交通省
「委任状」は、本人が手続きをするべきことを、代理人に行ってもらうことを認める書類です。
これまでの書類と異なり、委任状は形式が定められていない書類なので、下記の内容が含まれていれば委任状として効力を発揮します。
- 委任者の名前・住所
- 代理人(受任者)の名前・住所
- 委任する手続きの内容
- 手続きの対象になる車の車体番号または登録番号
テンプレートは国土交通省のホームページからダウンロードできますが、もしそれが使いにくいようであれば、自分で自由に作ることもできます。
7.譲渡証明書 *個人売買の場合のみ

引用:国土交通省
「譲渡証明書」は、車の名義変更をするために使用する書類です。車の年式や、所有者の情報を記入し、その車の所有者が変わったことを証明する書類です。
譲渡証明書は、委任状と同様に国土交通省のホームページからダウンロードできます。
ただし、自動車検査証(車検証)に記載の住所や名前と記入した内容が一致していないと、書類の不備と見なされ、書類として機能しなくなってしまいます。引っ越しや結婚などで、自動車検査証(車検証)に記載の内容と変更がある場合は、住民票も用意してください。
車種によっては必要になる書類
次に、売る車の種類によって必要になる書類を、それぞれ紹介します。
軽自動車の場合
売却する車が軽自動車の場合は、以下の書類が必要です。
軽自動車納税証明書

引用:軽自動車検査協会
軽自動車の場合は、普通自動車の場合に発行される自動車税納税証明書ではなく、「軽自動車税納税証明書」という書類が交付されます。必ず、売る年度のものを用意するようにしましょう。
軽自動車税は各市町村で課税されている税金です。もし、軽自動車税納税証明書が手元になければ、各市町村に問い合わせて発行してもらいましょう。
自動車検査証記入申請書 *個人売買の場合のみ

引用:軽自動車検査協会
軽自動車を売却する際は、譲渡証明書や委任状の代わりに、この「自動車検査証記入申請書」を記入します。これは軽自動車の名義変更のために使用する物で、中古車買取専門店やディーラー側が用意しますので、売り手側の準備は不要です。
トラック・大型車両の場合
続いて、トラックや大型車両を売却する際に必要になる書類を紹介します。これから紹介する書類は、冒頭で紹介した5つの書類に加えて用意する必要があります。
トラックの場合
トラックを売却する場合、用意する書類は以下の通りです。また、車検が付いているか否かも重要な基準で、それによっても必要な書類が変わります。
- 自重計技術基準適合証
- 自賠責保険異動承認請求書
- 事業用自動車等連絡書 *事業用トラックの場合のみ
- OCR申請書(継続車検用) *車検切れトラックを売却する場合のみ(用途不問)
タンクローリーの場合
売却する大型車両がタンクローリーの場合、さらに下記の書類も必要です。
- 設置許可証(初年度および最新分)
- タンク検査済証とプレート写真
- 完成検査済証(初年度および最新分)
- 安全装置機能検査済証
- 移動貯蔵タンク定期点検実施結果報告書(一式)
- 移動タンク貯蔵所 設置許可申請書添付図書
クレーン車の場合
売却する大型車両がクレーン車の場合、追加で必要になる書類は下記の通りです。
- クレーン明細書
- クレーン設置報告書
このように、トラック大型車両は、売る車種とその車の用途によって書類の有無も大きく変わりますので、まずは自分の車がどれに該当するかを把握した上で、準備をするといいでしょう。
プラス査定のチャンス!そろえておくと役立つ書類
以上の書類に加えて、用意しておくとさらに査定額アップのチャンスがある書類を紹介します。いずれも特に珍しい書類ではありませんので、用意する手間はさほどかからないはずです。売却時に用意することを、よく覚えておきましょう。もちろん、これまでに紹介した書類とは違い、これが無いと車を売れない!という訳ではないので、ご安心ください。
車の取扱説明書
車を購入すると付いてくる車の説明書は、実は重要な付属品の1つです。説明書には、車の操作方法や付いているパーツなど、基本的な情報が網羅されています。説明書があれば、買い手も安心してその車に乗ることができ、中古車としての価値が上がります。
車の説明書に次いで、純正のカーナビ、オプションパーツについての説明書も高評価につながります。ただし、純正品でないものは重要視されませんので、処分してしまっても問題ありません。
メンテナンスノート(整備記録簿)
メンテナンスノートは、その名の通り、車の修理や整備、状態を記録したノートです。常備することが定められている書類ですので、ダッシュボード等に入れて保管している方がほとんどです。
車の取扱説明書とは違い、メンテナンスノートは携帯必須とされている書類ですので、そろっていないと相場よりも買取額が下がる可能性があります。ただし、ディーラーに頼めば再発行してもらえることもあるので、もし紛失してしまった場合は一度相談してみましょう。
こんな時どうする?書類に関する3つのトラブルの解決法
必要書類について把握できても、実際に売るときにはトラブルが発生することも珍しくありません。ここでは、車を売るときに遭遇しやすい3つのトラブルと、その解決方法・注意点を紹介します。しっかりと対策をして、準備を万全にしましょう!
1:名義が法人になっていた!
個人事業主の方などで、車を事業用として使っていた場合、その名義が個人名義ではなく法人名義になっていた!ということがあります。しかし、法人名義の車も問題なく売却できます。
法人名義でも査定・買取OK
法人名義の車であっても、個人名義の車と同じように売ることができます。個人名義の車を売る時との違いは、用意する書類の種類です。
法人名義の車を売る際と、個人名義の車を売る際の必要書類の違いを比較してみましょう。
法人名義の車 | 個人名義の車 |
---|---|
自動車検査証(車検証) | 自動車検査証(車検証) |
自動車税納税証明書 | 自動車税納税証明書 |
自動車損害賠償保険証明書(自賠責保険証) | 自動車損害賠償保険証明書(自賠責保険証) |
法人の印鑑登録証明書 | 印鑑登録証明書 |
法人の実印 | 実印 |
委任状 | 委任状 |
譲渡証明書 | 譲渡証明書 |
表からもわかるように、実は法人名義の車と個人名義の車で用意する書類はほとんど変わりませんので、たとえ車が法人名義になっていたとしても焦る必要はありません。印鑑登録証明書と実印の種類にだけ注意して、売却の手続きを進めてください。
リース会社名義の車は事前に売却の可否を確認
カーローンやレンタカーではなく、カーリースを利用して社用車を使っている場合、車の名義はリース会社になっています。何らかの理由でリース会社名義の車を売らなければならなくなった場合、その車を売れるか不安に思う方も多いと思います。
結論から言えば、リース会社名義の車であっても法人名義の車と同様に売却できますが、あまりメリットがないのが実情です。
なぜなら、リース会社名義の車はあくまで「借りている車」。売る前にリース契約の解除をしたり、リースの代金を支払わなければならなかったりと、むしろ手間や支出が増える可能性が大いにあり、あまりおすすめできません。
リース会社名義の車を売却する場合、このような工程で進めます。
- リース会社名義の車の契約内容をよく確認し、車の売却ができるか判断する
- リース会社名義の車の代金をいったん全額支払い、自分名義にする
- 中古車買取専門店やディーラーに売却する
まずはリース契約をして借りている車を買取って、それからその車を自分の車として売るという流れですが、このようにそれなりの時間と費用がかかります。リース契約を解除して売るのですから、それに対して違約金等が発生する会社もありますし、そもそも買取自体を認めていないリース会社も存在します。やむを得ない事情でリース会社名義の車を売らなければならなくなった場合は、事前の確認をしっかりと行い、双方が納得した上で手続きを進めましょう。
2:必要な書類を無くした!
売る車種にあわせて必要書類を用意しようとしたら、「滅多に使わないものだから、どこへしまったか忘れた!」「もういらないと思って、捨ててしまった…」ということもしばしば。
しかし、書類のほとんどは再発行でき、再発行できない物でも代わりの書類を用意すれば間に合います。ここからは、各種書類の再発行についてまとめます。もし紛失に気づいても、慌てず落ち着いて、書類の準備を進めれば大丈夫です。
再発行を依頼する場所と必要な物、費用は?
車を売るときに必要な書類は、書類によって担当が異なります。また、書類の再発行にはそれぞれの書類ごとに準備する物があり、さらに費用がかかる物もあります。
書類 | 再発行の依頼先 | 再発行に必要な物 | 再発行費用 |
---|---|---|---|
自動車検査証 (車検証) |
運輸支局または 自動車検査登録事務所 |
本人確認書類、窓口でもらえる申請書・手数料納付書・理由書、自動車検査証再交付申請書(軽自動車の場合) | 300円 |
自動車税納税証明書 | 住んでいる都道府県の自動車税事務所・支所、県税事務所 | 自動車検査証(車検証)、窓口でもらえる申請書 | 無料~数百円 (自治体によって異なる) |
軽自動車税納税証明書 | 住んでいる市町村の役場 | 自動車検査証(車検証)、本人確認書類、印鑑 (自治体によって異なる) |
無料~数百円 (自治体によって異なる) |
自動車損害賠償保険証明書 (自賠責保険証) |
担当の保険会社または代理店 | 本人確認書類、印鑑、保険会社でもらえる再交付申請書 | 無料 |
リサイクル券 (自動車リサイクル料金の預託状況) |
自動車リサイクルシステムのホームページ | 特になし(ダウンロード・印刷のみ) | 無料 |
印鑑証明書 | 住んでいる市町村の役場 | 印鑑登録証 | 数百円 (自治体により異なる) |
住民票※ | 住んでいる市町村の役場 | 本人確認書類 | 数百円 (自治体により異なる) |
(※マークの書類は、場合によっては用意する必要が無いもの)
また、これらの書類の再発行を本人ではなく代理人が依頼する場合は、別途委任状が必要ですので、忘れずに準備しましょう。
再発行にかかる期間は書類によって違う
必要書類は、再発行しても無料~数百円程度であったり、もしくは再発行しなくても代わりの書類があったりと、もし無くしてしまっても経済的な負担はそれほど発生しません。
ところが、再発行にかかる時間は、書類によってさまざまです。例えば、自動車納税証明書や住民票など、管轄が各市町村である書類については窓口で申請すればその場で発行してもらうことができますが、保険代理店に依頼しないと再発行できない自動車損害賠償保険証明書(自賠責保険証)などは、数日~1週間程度かかる場合があります。そのため、必要書類の紛失に気づいたら、すぐに手配するようにしましょう。
3:売る車の車検が切れていた!
売る車にしばらく乗っていなかったら、車検が切れてしまっていた!という事態も考えられます。売ってしまう車であっても車検を受けた方が良いのかは悩むところですが、実際のところはどうでしょうか。
車検切れでも売却には問題ない
トラック・大型車両の売却についての項目でも少しだけ触れましたが、車検が切れている車でもそのまま買取業者やディーラーに売ることができますので、改めて車検を受ける必要はありません。また、買取業者自身が車を保管している間に車検が切れてしまうこともあるほどなので、車検の有無では査定額に大きな差が生じないようになっているのです。
ただし、個人売買の場合は話が変わってきます。というのも、車検切れの車は名義変更ができないため、そのまま個人間で売買してしまうと買い手が名義変更できず、保険への加入や税金の支払いができなくなってしまうのです。業者に売る場合はそのままでも問題ありませんが、個人売買をする場合のみ、車検は受けておくようにしましょう。
車検切れの車は移動に注意
車検切れの車であっても売却には問題ありませんが、車検切れの車は移動する際に注意が必要です。車検切れの車は公道を走ることが禁じられているためで、たとえ車を売るときの移動であっても罰せられます。
そのため、車検切れの車を売る場合は、以下のいずれかの移動手段を選ばなければなりません。
- 出張買取やレッカー移動をしてくれる業者に買取を依頼する
- 各市町村の役場で仮ナンバーを取得し、それをつけて移動する
仮ナンバーとは、車検が切れた車を一時的に運転できるようにもらう特別なナンバーです。仮ナンバーの発行には、このような手続きが必要です。
- 仮ナンバーを申請する車の自動車検査証(車検証)・自動車損害賠償保険証明書(自賠責保険証)と、認印・運転免許証を用意
- 住んでいる市町村の役場へ行き、仮ナンバーの申請書をもらう
- 申請書に記入した後、1で用意した4つの書類と一緒に窓口に提出
- 内容に不備がないかを確認してもらい、問題なければ仮ナンバーが発行される
このように、仮ナンバーの発行には少し手間がかかります。レッカー車が入れない場所にある車を移動させるなど、どうしても自分で車を移動させなければいけない場合は仮ナンバーを取得した方が良いですが、そうでないのであれば買取業者に任せてしまった方がスムーズです。
まとめ
この記事では、車の売却での必要書類について、車種ごとにまとめました。車の売却はそう何度も経験することではないので、トラブルになったり戸惑ったりすることもあるかもしれませんが、まずは自分に必要な書類を把握することが大切です。そこから、足りない物や無くしてしまった物があれば早めに行動し、もれなく用意することに努めましょう。この記事を読んでくださった方が自分にとって必要な書類をもれなく準備でき、スムーズに車を売れることを祈っています。
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